アルバム:私の声が聞こえますか リリース:1976年
歌詞:あぶな坂 Uta-Net
目次
歌詞
あぶな坂を越えたところに
あたしは住んでいる
坂を越えてくる人たちは
みんな けがをしてくる
橋をこわした おまえのせいと
口をそろえて なじるけど
遠いふるさとで 傷ついた言いわけに
坂を落ちてくるのが ここからは見える
今日もだれか 哀れな男が
坂をころげ落ちる
あたしは すぐ迎えにでかける
花束を抱いて
おまえがこんな やさしくすると
いつまでたっても 帰れない
遠いふるさとは おちぶれた男の名を
呼んでなどいないのが ここからは見える
今日も坂は だれかの痛みで
紅く染まっている
紅い花に魅かれて だれかが
今日も ころげ落ちる
おまえの服があんまり紅い
この目を くらませる
遠いかなたから あたしの黒い喪服を
目印にしてたのが ここからは見える
引用元:Uta-Net あぶな坂
解説
この曲は1stアルバム「私の声が聞こえますか」の1曲目である。
フォークギターから始まり、不気味なBGMに続き、難解な歌詞により中島みゆきの世界にしょっぱなから引き込まれる。
けがをしてくる、なじる、誰かの痛みで紅く染まっている、黒い喪服など、ネガティブなワードが多い曲だ。
この曲は、魅惑的な女性と、それに魅了され人生が転落してしまう数々の男性の歌であると私は考える。
あぶな坂という表現
あぶな坂とは、三途の川のように超えてはいけないラインを表現したもので、
男が女性に魅了され、あぶな坂を超えることで、けがをし、おちぶれ、家庭を失ってしまう曲である。
”あぶな坂を越えたところに
あたしは住んでいる
坂を越えてくる人たちは
みんな けがをしてくる”
あぶな坂を越えることで主人公の女性に会うことができるが、坂を越えるときに男性達はけがをしてくる。
女性に魅了され、一線を越えてしまうことで、例えば男性の妻に見限られたり、周囲から見限られたりと、傷を負いおちぶれてしまうことを表現しているのだと私は考える。
あぶな坂という、どこかの地元民が名づけそうな坂の名前が、現実味を帯びているとともに、三途の川のように身を滅ぼす境目として表現しているのは、リアルとフィクションの対義をうまく表現していると思う。
”橋をこわした おまえのせいと
口をそろえて なじるけど
遠いふるさとで 傷ついた言いわけに
坂を落ちてくるのが ここからは見える ”
橋が壊れると、対岸への道がなくなってしまうことから、
橋を壊したとは、自分の円満な人生の道を壊したと言い換えることができる。
自分の人生を壊したのはお前のせいだと、皆が女性を問い詰める。
そしてまた一人と、人生が転落していく姿が、女性からは見えている。
哀れな男と故意のやさしさ
”今日もだれか 哀れな男が
坂をころげ落ちる
あたしは すぐ迎えにでかける
花束を抱いて
おまえがこんな やさしくすると
いつまでたっても 帰れない”
女性は「哀れな男」としっかりと理解しているのに、花束を抱くほどのやさしさで接するのは、故意的にやさしく接しているのだろう。
女性はうれしい言葉を言われたいためにやさしくしているのだろうか?
それとも、哀れな男をもてあそぶためにやさしくしているのだろうか?
どちらにしても、哀れな男という言葉選びが、中島みゆきらし
さを感じられるのではないだろうか。
”遠いふるさとは おちぶれた男の名を
呼んでなどいないのが ここからは見える”
遠いふるさとを、実家と考えると、おそらく男は両親からも見限られたのだろう。
紅い痛みと黒い喪服
3番の歌詞は、紅と黒のコントラストを強調しているのが非常に美しい。
そして、男性だけが傷ついているのではなく、女性も傷ついているのだと推測する。
今日も誰かの痛みで紅く染まっているとのことから、男性が傷ついているのが直接的な表現でイメージしやすいのだが、女性が自分を黒い喪服と例えているのが、この歌詞のポイントだと私は考える。
「さみしかったから浮気をしてしまったの」「だってあなたがかまってくれなかったから」「身体を許したくないのに、快感におぼれ、身体を許してしまうセックス依存症」などの女性の悩みはネット上やテレビなどで見かけることが多い。
実際にその行動を起こしてしまうのが悪いのだろうが、自己をコントロールできず、またやってしまったと自分で自分を傷つけてしまう人がいるように、この歌の女性も、相手をもてあそんでいるように見えて、自分で自分を傷つけてしまっているのかもしれない。
この曲に合うお酒
この曲に合わせて飲むなら、グレンドロナック12年はいかがだろうか。
マッカランに劣らない味わいでありながら、マッカランの半額の値段で購入することが出来る逸品だ。
飲み方は、ストレートかロックで、曲を聴きながらちびちびと味わって欲しい。
シェリー樽由来のはちみつや懐かしい草原のような香り、奥行きには少しスパイシーさも感じられる。
味わいはとても甘めであり、ビターチョコのような香ばしさも感じられるウイスキーだ。
妖艶な甘さの中にスパイシーさの奥行きは、まさにこの曲そっくりだ。
オススメの曲
顔のない街の中で
知らない人の笑顔や暮らしが失われても何も思わないだろう。知らない人を物のように感じ 扱ってしまう。自分のことで精一杯になっていないか?相手のことを尊重できているか?知らない人に対して慈悲の心を持っているか?中島みゆきはこの歌を通してそう伝えている。
I Love You,答えてくれ
愛する相手がいること、相手を好きでいられること、それだけで幸せなんじゃないのか?と聴き手に訴えかけ、愛すること自体が幸せなのだと気づくことが出来る曲です。
Nobody is Right
正しさとは何なのか。間違いとは何なのか。完璧正しい人などいるのか?自分は正しい人間なのだとうぬぼれていないか。しっかりと相手を尊重しようじゃないか。という歌です。